ユダ・スパイ説

福音書はユダをきわめて特殊に定式化しているので、その実像は不明である。福音書の記述から、ユダは権力が差し向けたスパイではなかったか、ということも一応考えられる。公安スパイのような存在として「危険集団」の中に侵入していたということは十分あり得るからである。しかしそのような関心から福音書の背後にある政治性(歴史性)を捉えてみても、あまり生産的な意味はないだろう。むしろ福音書において、ユダがどのように表わされているか、ということを考える方が重要である。