「ただの人」ではないイエス

エスは歴史の一齣に現れた一個人である。かれが当時の権力体制に逆らったために処刑されたということも、反体制者の処刑とみれば、歴史上くりかえし行われてきたことである。にもかかわらずイエスだけがキリストとなり、後世に甚大な影響を与える存在となったのは、メシア思想が彼の死に意味を与えたこと、そしてそれを原始教会がイエス=キリストとして告白したことによる。この特殊な一回性ゆえにイエスを「ただの人」と見ることはできない。