ヨハネ像の定着

サロメの物語にも伝承経路はあるだろう。この手の話は人口に膾炙しやすいものである。マルコはヨハネを「先駆者」の物語として組み立て、その中にこの話を織り込んだ。以来ヨハネはイエスの先駆者、言い換えればイエスの「格下」として位置づけられたのである。それだけではない。ヨハネ像の定着はヨハネの歴史的(政治的)意義を薄め、あるいは消去した。それは同時にイエスの処刑にも当てはまる。