浮かび上がる政治性

書くという行為はあるものを表わすと同時にあるものを隠すという行為でもある。福音書はイエスの政治性を隠している。だが隠しているということは、その本体は潜在しているということである。そう思って読んでみると、随所に隠された政治性が浮かび上がってくる。とくにマルコは、イエスと権力との対立構図をはっきりと打ち出し、そこに被支配者と支配者、貧しい者と富める者という現実の社会構造を浮かび上がらせている。